レーザ発振器の選定
ここでは、レーザ発振器の選定ポイントについてご説明いたします。
【レーザ発振器の選定ポイント】
レーザ加工は、材料がレーザ光を吸収することで行われる加工です。そのため、材料の光吸収特性に応じてレーザ発振器を選定することは、レーザ光を効率的に利用するという意味ではとても大切なことになります。しかし、レーザ発振器の選定を考える上では、加工対象物(材質や厚みなど)や要求される加工条件(加工径、タクト、品質)も考慮に入れる必要があります。 さらに、コストも重要な選定ポイントになります。 ここではレーザ発振器を選定する上で考慮すべきポイントを上げてみます。
<レーザ発振器の選定におけるポイント>
1.レーザ発振器の出力(パルス平均出力、パルスエネルギー、ピークパワー)
<影響する項目>
・加工径(径が大きいほど高い出力が必要)
・加工タクト(速度が速いほど高い出力が必要)
2.レーザ発振器の繰り返し周波数
<影響する項目>
・加工タクト(繰り返し周波数が高いほど速く加工できる。)
ただし、繰り返し周波数が高くなるとパルスエネルギーが低くなることに注意が必要。
3.レーザ発振器のパルス幅
<影響する項目>
・加工品質(パルス幅(=レーザ光 1パルスが材料に作用する時間)が短いほど加工における熱影
響が少ない)
4.コスト
<影響する項目>
・レーザ光(波長)(波長が短くなるほど材料への吸収率が上がるが、コストも高くなる)
・出力(出力が高くなるほどコストも上がる)
・パルス幅(極短パルスと言われるピコ秒以上にパルス幅が短くなるとコストが上がる)
5.発振器の種類
・ファイバーレーザ(コスト、信頼性などレーザ加工において最も導入のしやすいレーザ)
・高調波レーザ(グリーン、UVレーザなど、材料への吸収率を考慮する場合に最適なレーザ)
・極短パルスレーザ(パルス幅がピコ秒、フェムト秒の域になると材料への吸収率が上がり、
熱影響を抑制する加工が可能となる。)
・炭酸ガスレーザ(光の中赤外域に吸収を持つ材料の加工に最適)
・エキシマレーザ(紫外線を発振するガスレーザで、面加工を得意とするレーザ)
6.発振器メーカー
・販売実績(一般的に販売実績が多いほど信頼性も高い)
・サービス(サービス方法、人数、拠点はダウンタイムを考慮する上で重要)
レーザ発振器の選定手順としては、最もコストが低く、取り扱いの容易なファイバーレーザから検討するのが賢明と考えます。ファイバーレーザが条件を満たせない場合に、その理由に基づいて他のレーザを選択することがレーザ発振器選定の近道と言えます。
【各種レーザ発振器の特徴】
微細加工用パルスレーザ比較
【品質重視のピコ秒パルスレーザ
vs. コスト重視ナノ秒パルスレーザ】
同じ波長のレーザで加工する場合、エネルギーが高ければ高いほど加工量は多く、繰り返し周波数(1秒間に発振するパルス数)が高いほど速く加工を行うことができます。そして加工品質上最も重要なのがパルス幅になります。パルス幅とは1パルスの時間幅になり、加工対象物にレーザ光の熱をかけている時間と言えます。すなわち、パルス幅は短ければ短いほど、熱影響が少ないと言えます。極短パルスレーザと呼ばれるピコ秒レーザは、パルス幅が極端に狭く、ピーク出力(1パルス当たりの平均出力)が高いため、通常、レーザ光の吸収で行われる加工が、極短パルスレーザでは多光子吸収により加工が行われます。そのため熱影響を抑えた高品質な加工が行えます。
基本的には、ターゲット材料の材質、加工条件(加工タクトや求める品質)によりレーザを選定します。
一般的に加工タクトを重要視する加工には、ナノ秒パルスレーザが採用されています、
一方で、熱影響を抑える必要のある加工は多少価格が高くなっても極短(ピコ秒、フェムト秒)パルスレーザが採用されています。極短パルスのピコ秒とフェムト秒パルスレーザとでは、加工タクトとコストの違いからピコ秒パルスレーザが生産には多く採用されています。特に、ステンレスやクロムメッキされた金属への視認性が高い黒色マーキングや金属部品のバリなし加工、その他極微細な部分への非熱加工分野で多く利用されています。
熱加工用CWレーザ比較
【シングルモードレーザ vs. マルチモードレーザ】
熱加工用CWレーザは、加工においてシングルモードレーザとマルチモードレーザの2種類に大別されます。2つは光強度分布に大きな違いがあり、きれいな正規分布(中心部の光強度が高い)の光強度プロファイルをもつのがシングルモードで、それ以外の光強度プロファイルをもつのがマルチモードレーザになります。
シングルモードレーザプロファイル
マルチモードレーザプロファイル
<特徴>
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光強度分布がガウシアン形状で、 中心部の強度が非常に高い
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ビーム径を小さく絞ることができる
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加工貫通力に優れ、加工速度が 速く、深く加工をおこなうことができます。
<特徴>
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光強度分布がなだらかな鐘形をしている。
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ビーム径を大きくするのに適している。
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溶接加工時のスパッタ抑制に効果的です。
熱加工用レーザの場合、レーザ光を吸収した部分が熱で溶けて加工されます。レーザの出力が高くなればなるほど加工が深くなり、加工速度が上がります。しかしながら、高出力での加工は熱量がかなり大きく、薄いターゲット材料では熱ひずみの影響を受け、加工品質が低下してしまいます。シングルモードレーザであれば熱加工でありながら熱影響を極力抑えた加工を可能とします。同出力条件でマルチモードレーザの加工と比較した場合、シングルモードレーザの加工は、加工幅が小さく、高速で加工を行うため熱歪みを低減できます。
一方のマルチモードは、溶接ビード幅を広く取りたい場合やスパッタの低減を狙う場合に使用されます。
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